1 服務規程(規律)

服務規程(規律)とは、従業員が守るべきルールや義務のことです。従業員に求められる行動規範ともいえます。

服務規程(規律)は、就業規則に定める義務はありませんが、秩序維持のため、就業規則で定めるのが一般的です。きちんと明文化しておくことで、従業員の意識も高まりますし、労働トラブルの回避にもつながります。

2 服務規程(規律)の目的

服務規律の目的は、従業員の認識を統一し、秩序を守ることにあります。

ルールが曖昧だと、従業員が好き勝手に行動し、協調性がなくなってしまい、その結果、会社の生産性が低下し、経営悪化につながりかねません。

また、協調性がなければ、職場の雰囲気も悪くなり、人手不足の現在の世の中では、従業員は他の居心地のよい会社に転職してしまい、その会社自体が人手不足に陥ることになるかもしれません。

今までとは違い、服務規程(規律)をきちんと定めておくことが重要となってきています。

3 服務規程(規律)に定める内容

服務規律の内容は、主に以下の(1)~(3)に分けられます。

(1)労働者の就業に関する規律

労働者の就業に関する規律には、以下のようなものが あります。

ア 勤怠に関すること

  出退勤時の打刻方法、遅刻、早退、欠勤、休暇の届出、勤務時間中の私用外出の許可等

イ 所持品検査に関すること

  不要な私物の持込み禁止、所持品検査を行う場合があること

ウ 服装や身だしなみに関すること

  髪型や爪、髭などは常に清潔感を保つこと、華美な衣類やアクセサリーは着用しないこと、髪の色や長さ等について

エ ハラスメントに関すること

  パワハラ、セクハラ、マタハラ、パタハラ、SOGIハラの禁止など

(2)会社財産の管理・保全のための規律の管理・保全のための規律

会社に損害を与えないようにする規律で、具体的には、以下のようなものがあります。

ア 備品の管理に関すること

  会社から貸与されたパソコンや携帯は、破損や紛失がないように扱うこと、会社の備品を持ち出さないこと等

イ 政治活動や宗教活動の禁止

  会社内でビラ配りや支持する政党の宣伝など政治上の目的がある行為を行わないこと、自身が信仰する宗教の布教、勧誘を行わないこと等

ウ 金銭授受や贈与に関すること

  従業員同士で金銭の貸し借りをしないこと、他の従業員の保証人にならないこと等

エ 施設利用に関すること

  無許可で会社の施設を利用しないこと、終業後は職場に滞留しないこと、会社の施設内で喫煙しないこと等

(3)労働者としての地位・身分による規律

労働者の地位・身分による規律には、以下のようなものがあります。

ア 兼業や副業に関すること

  労働者には職業選択の自由が保障されているため、兼業や副業を一切禁止するのは困難であることから、自社の業務に支障をきたさないよう、事前申請や許可が必要である旨、定めておくことが一般的です。

イ 競業避止義務について

  同業他社への転職を制限する規定です。社内の機密情報や顧客リストが漏洩するおそれがあるため、多くの会社で設けられていますが、労働者には職業選択の自由があるため、同業他社への転職を一切禁止するのは困難です。

競業行為禁止の期間や地域、労働者の地位や職務内容、競業避止の必要性などを考慮し、合理的な範囲で定める必要があります。

ウ 秘密保持義務について

  会社・事業所の機密情報を守るための規定です。

  会社や取引先の機密情報を漏洩しないこと、自身の業務に関係ない情報を不正に取得しないこと、退職時は会社や取引先の機密情報を速やかに返却すること等について定めることが一般的です。

4 時代に適したルールづくり

 一昔前には存在しなかったパソコンや携帯電話、メールが一気に普及し、現在ではいつの間にかスマートフォンやSNSが普及しています。その変化はあっという間だったと思われる方が多いのではないでしょうか。IT化やデジタル化については、今後も急速に進化が続くことになると思われます。

 また、そのようなツールやシステムの変化だけでなく、ハラスメントやSOGIハラ、環境問題など社会の意識や認識も大きく変化しています。

 そのような中、服務規程(規律)も時代に合わせた規程にするため、会社に関するSNSの利用制限規定などを追加、変更していく必要があります。