1 定年退職
定年退職とは、定年制を導入している企業に勤務する労働者が、あらかじめ決められた年齢を過ぎたときに退職することです。
以前は、定年退職の年齢は60歳が一般的でしたが、2013年(平成25年)4月1日施行の高年齢者雇用安定法の改正により、希望者全員の65歳までの雇用確保措置が事業主に義務付けられました。
さらに、令和3年4月1日施行の同法改正により、下記の①~⑤のいずれかの措置を講ずることが努力義務とされました。
①70歳まで定年年齢を引き上げ
②70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入(他の事業主によるものを含む)
③定年制を廃止
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a 事業主が自ら実施する社会貢献事業
b 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業
2 役職定年制度
役職定年制とは、定年前のある一定の年齢で役職を退くように設計された制度のことで、役職定年後は役職のない従業員となり、職務内容によって処遇も変化します。
(1)メリット
ア 若手従業員のモチベーション向上
若手従業員を早めに管理職ポストにつかせる機会を増やすことになり、若手従業員のモチベーションの向上につながり、組織が活性化され、新しいアイデア等を経営に反映させやすくすることができます。
イ 人件費の抑制
給与が高いシニア層の管理職が減ることにより、人件費を抑制できます。
(2)デメリット
ア シニア層のモチベーション低下
役職手当がなくなることによる賃金の低下、管理職の立場から一般職や専門職の立場になることによる職務内容の変化、部下との立場の逆転、希望しない職務への変更など、シニア層にとって勤労意欲が低下することがデメリットとして考えられます。
(3)役職定年制度を導入する際の留意点
役職定年制度を設ける場合には、就業規則を変更する必要があります。
役職定年の対象従業員については、役職手当等がなくなることにより賃金が減額となりますので、職務内容が同じままで賃金減額とならないように制度設計をする必要があります。
また、上記(2)で記したデメリットを克服するため、賃金が低下しても、勤労意欲が下がらないように、それまでの経験や知見を活かせる、研修や教育係などの業務に就かせたりして役職定年者に存在意義を感じてもらうように工夫することが肝要です。